仏像制作を中心に作(創)ること、幸せに生きることを綴ります

悔いを抱えて生きる人へ贈る物語

2021/12/14
雑記

毎度おなじみ(?)音読動画シリーズ。これは私にとってすごく大切な物語となりました。ラストがね、気に入っているのです。物語のセンスがすごいなと。ぜひ最後までご覧ください。

それから、英語の字幕も設定してます。この動画を創った時に「英語にして世界中の人にも読んでもらいたい」と思い、先に出した動画にも英語字幕を付け始めました。

設定から字幕を選ぶときに日本語か英語を選べるようになってます。ほとんど機械翻訳ですから細やかな表現はできませんがあらすじは理解できるようになっているはず。

「海外から絵本にしたいって依頼が来ちゃったらどうします?」「そしたら絵を描いてくれる人を探さなきゃ。兄(画家の松永禎郎さん)が生きていたら描いてもらえたのにねぇと娘と話したのよ」と未来を楽しんでいます。

蛙のお医者さま

蛙のお医者さまは、本当は、蛙王国の王様でした。

王様として国中を見廻っている時、国の中には蛙だけでなく小さな動物や虫達が大勢いて、各々が食物に困っていたり、怪我をして動けなくなったりしているのを目にしました。

若い王さまは、政治は信頼できる大臣達にまかせ、医療の勉強をして、お医者さまになったのです。

お腹に水の溜ったおじいさん蛙を治したり、蛇に足を食いちぎられた若い蛙には義足を作って上げたり、飛べなくなったトンボの羽を治してあげたりしていました。

沢蟹のキーコの一家も、はさみが使えなくなったおじいちゃんの手を治したり、動けなくなっているおばあちゃんを安全な病院に入院させてもらったり、とてもお世話になっていました。

おじいちゃんもおばあちゃんも長生きして、安心して空に昇ってお星さまになりました。

蛙先生の病院には沢山の患者が押しかけ、先生は大忙し、入院できる病棟も新しく大きくなりました。

沢蟹のキーコの仲間達も、人間の子供に足をむしられたり、大勢つかまって唐揚げにされたりしていましたが、これも蛙先生が安全な池を作ってくれて、静かに楽しく暮すことが出来るようになっていました。

キーコ達は、水草や苔の他に、トマトや柔らかなパンが大好きです。 病院のお姉さんはお料理すると必ず、キーコ達に端切れを分けてくれました。 蟹たちは、わっしょいわっしょいと自分の体より大きなパンの端やトマトを背負って各々の家に持ち帰り家族で一緒に美味しく楽しく食事するのでした。

皆、蛙先生が大好きでした。 蛙先生がどこかに行ってしまうなんて、考えられない事でした。

ところが蛙先生は皆の為に働き過ぎて、病気になっていらしたのです。 それでも熱心に往診して励まして下さる先生の体調に気付かず、先生を頼り続けたのです。

先生は或る日、冷たく動けなくなっておられました。 お月さまの国に召されたのです。

先生の御躰は銀の馬車に乗せられ、馬追虫の十頭立の馬車には、鈴虫の四人のお姉さんが付き添ってお月さまに向って旅立つ日が参りました。

お世話になった皆はお見送りを致しました。皆、胸がつぶれる位悲しくて、言葉もなく、涙で見送るしかありませんでした。 ところが沢蟹のキーコがいないのです。

先生に一番お世話になったというのにキーコは何と、ボランティアの会合という事で遠くまで出掛けていたのです。

お見送りの為に欠席することも出来たはずなのに、その時のキーコは大勢のお見送り式とは別の日に先生の奥様をお慰めしながら永い間のお礼を申上げたいと考えてしまったのです。

実際帰ってからそのようにしました。 一年が経ちました。

「一周忌に参列して下さいますか。」と、奥さまはわざわざキーコにお声を掛けて下さったのに、その日もキーコはボランティアの用事があって行けませんでした。 奥さまは「分かりました。」と淋しげにおっしゃって、少しも責めたりなさいませんでした。

その後も、キーコの家族達は蛙病院のお世話になり続け、長い間、皆健康に過すことが出来ていたのです。

キーコも年を重ね、自分を振り返る事が多くなった時、お式の日、一周忌の日の無礼を申し訳なかったと深く、苦しく、激しく思うようになりました。

もう、どう自分を責めたところであの日は戻っては来ないのです。 自分を責める事しか出来ないのかと、毎日思い悩むようになりました。

満月の夜でした。お月様は眞丸く、銀色に下界に光を送って下さっていらっしゃいました。

ふと足元を見ると、使いかけのパステルの箱が落ちていました。

そうだ、馬追虫さんの足は細い、スイッチョスイッチョと一生懸命走っても、未だお月さまには着いていない。 このパステルで沢蟹の皆の背中を塗ろう、きれいなお花畑のように一匹一匹動きまわるお花として、空の上から蛙先生に見て頂こう。

キーコは仲間達の小さな甲羅にパステルで色を塗り始めました。 仲間達には嫌がる子もいましたが、だんだん面白がって背中をさし出すようになりました。

沢蟹の子供達は卵からかえった時はとても小さく、お魚に食べられてしまうことが多く、甲羅が一センチ位になる迄は目が離せません。 その代り、一センチ迄育つと、とても早く走り回ってあちこちに遊びに行きます。 これも目が離せないのです。木にも登ります。網戸だって平気。

パステルの色数が日に日に増えて来ました。小さな色の甲羅も集まれば絵のように見えるのです。

「蛙先生見えますか。こんな事しか出来ませんが、あの日のこと、許して下さい」

こんな事、何にもならないことは分っています。 それでもキーコは赤い大きな爪を持った仲間の猛者、アッカンマッカン(ザリガニ)の背中にも勇気を揮って塗りました。 皆、優しく協力してくれました。

そんな事で許されるはずもないのに、
お月さまに駆ける馬追虫さんの足が折れませんように、
鈴虫さんの羽が擦り切れませんように、
蛙先生が気付いて下さいますように、
動き廻る小花達に笑って下さいますように。
銀色のお月さま、無事に蛙先生をお迎え下さい。

キーコはすすきの陰から、今夜もお月さまに祈ります。

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